2013年5月19日日曜日

言葉はいらない



「どっか行ってたの?」


「見ればわかるでしょ。サンポ。珍しいじゃん、サトシがこんな時間に起きてるなんて」


サトシとルームシェアを始めてもう3年経つ。始めの頃はサンポも良く行ったし、一緒にいる時間も長かった。

でも最近は、サトシが不規則な生活もあり、一緒にいる時間も減ってしまった。

たまに、同じ部屋にいることもあるけど、お互いもう空気みたいな存在だ。


「あー、ねみぃ」


と言って、サトシは自分の部屋に入っていく。

私は少しダラダラと過ごし、ご飯を食べていた。サトシの部屋からいつものように音楽が聞こえてくる。

あれっ、いつもの感じの音楽と違う。始めて聞く曲だったけど、良い感じの曲で心地良くなる。

懐かしい。始めてサトシと出会った頃は、よくこういった音楽を聞かせてくれていた。


「サトシ、ご飯出来たよ」


「ありがと、ユカ」


部屋をでてきたサトシに、私は久しぶりに抱きついた。


「おっ、うれしそうにして。やっぱ分かるか、おまえこういう音楽好きだもんな」


改めて思った。サトシは私のことよく分かってくれてるな。


「ヨシヨシと、こんないっぱい尻尾振って。じゃもう一回俺とサンポ行くか」


「エルのサンポはさっき私が行ったでしょ。それより早くご飯たべてよ」


ユカのケチ。久しぶりにサトシと一緒にサンポに行っても良いかなって思ったのに。



2013年5月1日水曜日

御衣黄


復卵:少し変な人

マスター:セブンの飼い主

セブン:太っちょミニチュアダックス♀



復卵:「人は比較対象がいると、どうしても比較してしまうとおもいません?そして、普段は心の何処かに隠してるのに、比較することで、再確認させられたりするんですよ。それは嫌なものでね、へこむんですよね」

セブン:「比較されるから、太って見えてしまうワン」

マスター:「あちゃー、復卵さんすごい落ちてるじゃないですか。何か比較するようなことあったんですか?」

復卵:「こないだ友人の結婚式に出席したんですよ。そこで、多くの人と出会うじゃない。多くの人が普通にやれていることなのに、自分は出来ないんだなーと思ってね。同じことの繰り返しの毎日だと、忘れてるのに、そういう特別な場だと、再確認させられるよね」

復卵:「はー、マスターカクテルを何かひとつ」

マスター:「じゃ、これを」

復卵:「おっ、この中にはいっているのは、桜の花びらをシロップで漬けたやつだね」

セブン:「落ちてる花びらが全てシロップに漬けらてたら、食べ放題だワン」

復卵:「ん?だからか、だとしたら面白いな」

マスター:「どうかしました?」

復卵:「ところでマスター、サクラの花びらって何色」

マスター:「何言ってるんですか、目の前にあるじゃない。ピンクでしょ」

復卵:「そうですね。でも、緑の花を咲かすサクラもあるって知ってる?」

マスター:「緑の花?」

復卵:「『御衣黄』っていうんだけどね。御衣黄も最近見に行ったんだけど、何で緑の花を咲かすのでしょうね」

マスター:「ピンクじゃなくて緑・・・、何ででしょう」

復卵:「僕が想像したのは、ピンクの花を咲かすサクラの種類っていっぱいあるじゃない、それだけの種類があると、比較されると思うんだよね。だから、比較されにくくなるために、今日から緑で行くって決めたんじゃないかな」

マスター:「なるほど、それを面白がってたんですね。わかりました、緑の花びらに合うカクテルを、復卵さんのために考えますよ」

復卵:「よーし、御衣黄のように生きていくよ」

セブン:「シロップにさえ漬けてくれれば、色は何でも良いワン」